アダン
原産地
科名:タコノキ科
学名:Pandanus odoratissimus L.f.
英名:screw pine
kewda
はじめに・・・
アダンの学名はPandanus odoratissimusで、このパンダヌスの種類はたくさんあるそうです。
おかげでアダンについての理解は混乱しているようで、たまには間違った説明がされているのも見受けられます
そういう私も、いまだに混乱しているので、このような記事をまとめるのは時期尚早と思っていますが、
かといって、いつまでも放って置くこともできずに、やむにやまれず書いています。
もし間違っていたら指摘して頂けると嬉しいです。
アダンの情景
子供の頃、沖縄本島で育ったにもかかわらずアダンの木には関心がありませんでした。
海辺で見かけるアダンの木はおばけのような姿に見えて
「なんてブスなんだろう」とさえ思ったものです。
ある時、孤高の日本画家、田中一村の絵を見てショックを覚えました。
そこで描かれているアダンの木はエキゾチックな空間を醸し出していました。
それからというもの、私にとってアダンの木あってこそ南の島の風景と勝手に思っています。
宮古島の海岸には到る処にアダンの木が生えています。
どんな大型台風が吹き荒れようとあたかも島を守るかのように島に抱きついているさまは圧巻です。
生活の中のアダン
かつて島の人たちにとって、アダンは生活に欠かせない大切な木でした。
堅くて丈夫な芯がある幹は小屋の柱に利用され、アダンの葉はトゲを取り除いてから
鍋でゆがいて乾燥させ屋根材、ぞうり、カゴ類、ゴザ、バッグ類などに利用されてきました。
一時期、パナマ帽の原料として沖縄の産業を支えたこともあったそうです。
アダンは学問上の名前はパンダヌス(Pandanus)で、植物上の分類はタコノキ科という仲間に属しています。
幹から太い気根がいくつも伸びてタコの足に似ていることに由来しているそうで、この気根を宮古島の方言で「アダナス」と呼びます。
アダナスは丈夫な繊維でできていて水にも強いので、これで作られたカゴは海で捕れた魚や貝を入れるのに最適です。
作り方は切ってきたアダナスを鎌かナイフで縦に何枚もひらたく割いて天日で干しします。
乾燥したらさらに細く割いて糸状にします。これで縄をなって、その縄で魚籠、牛馬の鼻綱、小舟の錨綱等をつくります。
アダナスでできた物は使い込むほど、ますます丈夫になるとされ、
逆に使わずに放置しておくと自然に劣化していって、しまいにはボロボロになって崩れていきます。
アダンの実を初めて見た人は「パイナップルですか?」と聞くほど、一見パイナップルのように見えますが
まったく別ものです。ミクロネシアのように食用にする国もありますが、通常は食べません!
アダンの実はヤシガニの好物で、熟してとても良い香りが漂ってくる頃にヤシガニが木を上って実を食べます。
25cm〜30cmくらいの橙色の実の周りが種子の集まりで、熟するとバラバラになって落ちます。
この種子の周りは乾燥させると繊維状になるのでハワイではブラシとして利用されているそうです。
また、自然のデンタルフロスト(歯の掃除)として利用している地域もあるようです。
中心に軟らかい芯のようなものがあり、わずかな甘みが含まれるために昔の子供達のおやつだったといわれていますが、
今ではあま〜いお菓子はいくらでもあるので、アダンの実を食べる人はほとんどいません。
それどころか、食べられるということさえ知らないようです。
さて、アダンの実が食べられるものでありながら、食用としての利用価値は少ないと述べましたが
石垣島に行くと食用のアダンが売られています。それはアダンの新芽です。
新芽を米のとぎ汁ゆがいてあく抜きしてから煮物や炒め物として味付けをすると、まるでタケノコのような食感です。
法事などのような行事料理として用いると聞いていますが、あく抜きがたいへんなので
もっぱら観光客向けの料理に使用されているようです。
不思議なことに石垣島では新芽を料理に使っていますが、
となりである我が宮古島では、ほとんどの人が利用していないようです。
アダンの実の利用方法として、他には仏壇のお供え物としての利用がありますが、
ここ宮古島では、ほとんど見かけません。
利用価値の高いアダン
アダンは防風、防潮だけでなく人々の暮らしにも役だってきたことは結構知られていますが、
調べているうちに意外な用途があることを知りました。たとえばお菓子の香りづけ、香水、民間薬、化粧品等々。
数多くあるパンダヌスの種類のうち比較的知られているものを紹介しながら、これらの些細について書いていきたいと思います。
パンダヌスの種類
パンダヌス(マレー語のパンダン(Pandang)に由来している)は
アジア、太平洋諸島の島々の海岸の近くに自生する亜熱帯常緑灌木で、
日本では奄美大島から南の方の琉球列島の全島で見ることができます。
約650〜700種以上もの種類があるとされ、雄、雌、異株です。
Pandanus tectorius(アダン)
沖縄にある一般的なアダンのことで高さは3〜6メートルくらい、タコノキよりも小型で横に枝を広げるので写真のようにかなり暴れた樹形になります。
幹からいくつもの太い気根を出して地面にもぐり込んで、支柱根として木を支えるのでどんな強風や暴風にも耐えます。
葉の縁と裏面主脈上には棘があります。パイナップルによく似た果実は熟すると橙色になり良い香りを放ちます。ヤシガニの大好物です。
アダンは湿度と気温が高い地域で育ち、越冬温度は10℃程度といわれています。
アダンはパンダヌスの中で利用価値の高い植物といわれています。
アダンの幹、葉、気根などを利用して草履、籠、ムシロ、家の材料、バッグなどさまざまなものが作られることからP.tectorius(テクトリアス)「屋根を葺くのに用いる」と呼ばれます。
また、雄花からは強い香りがするため、アダンのことを「P.odoratissimus(Fragrant screw pine)」ともいいます。
インドでつくられるエッセンシャルオイル「kewda oil」やハーブウォーター「Kewda water」はたいへん有名です。
キューダオイル「kewda oil」はバラの香りに似ていてフルーティーな香りといわれており、
香水や化粧品、タバコの香料などに使用されています。
キューダウォーター「Kewda water」は、シロップ、アイスクリームなど、さまざまな飲み物や食べ物の香り付けに使われています。
アダンの葉も香りがあるとされ、フイリピンではお米の香り付けに使用すると聞きますが、
通常はニオイアダンの葉を使用しアダンの葉はあくまでも代用なのだそうです。
南アジアではアダンの木すべての部分が薬草療法として利用されています。
葉や気根を煎じてお茶のようにして利尿剤として飲む他に、湿布して癒傷、抗炎症、抗酸化、殺菌、消毒などに使われています。
また、ミルクと混ぜてのむと流産を予防するとも信じられています。
花も食用になり、そのエキスは神経痛やリューマチに利くといわれているので、
キャリアオイルに香りの良い kewda oilを加えてマッサージしてみるのもいいかもしれません。
他には幹の芯を粉末にしたものを燻して気管支の治療に使われることもあります。
あまり日本ではなじみのないアダンですが、国内でもアダンの保湿効果を謳った化粧品などがすでに販売はされています。
Pandanus boninennsis(タコノキ)
小笠原諸島特産のタコノキで boninennsisは小笠原諸島のBonin islandsから由来しているそうです。
別名オガサワラタコノキ、またはキアダンとも呼ばれています。
乾燥や潮風に強いため沖縄でも公園や道路などの緑樹として広く植栽されています。
アダンと混同しやすいですが、幹は直立して4〜6メートルもの高さになり、アダンよりもガッチリした樹形です。
果実も大型で熟すると黄赤色になり随や種子は食べられるそうです。
左の写真は家の近くの道路沿いにあるオガサワラタコノキです。今年はぜひ食べてみたいと思います♪
Pandanus utilis Bory(ビヨウタコノキ,アカタコノキ)
マダガスカル原産で高さ20mくらいにもなるタコノキです。おそらくタコノキ科では一番大きいのではないかと思います。
長さ50〜90cmくらいの長さもある葉は直立し、その見事な姿には圧倒されます。「タコノキ」の仲間ではもっとも美しいことから
もっぱら観賞用として植栽されています。オレンジ色の種子は食べられませんとも食用ですともあるので、どちらが正しいかはわかりません。食べてみればわかることだろうとは思いますが(^^ゞ
Pandanus amaryllifolius Roxb.(ニオイアダン)
別名Pandanus odorus Ridl.ともいう。パンダンリーフ(葉)は香りが良いことで有名で、「東洋のバニラ」とも評されています。
インドやタイ、インドネシアなどなど熱帯アジアでは食べ物の香り付けに広く使われています。
香りの成分はサフランやローズの香りの成分と似ているとされるが、実際には香り米の匂いと評されています。
フィリピンでは葉を米飯に入れて炊き、新米のような香りをつけるのに使われています。
近年、ニオイアダンは香り以外に健康に良いことも知られるようになっています。
たとえば動脈硬化予防、抗炎症、抗酸化、抗アレルギーなどです。
香りを楽しみながら健康にも役立つなんてステキですね♪
ニオイアダンの苗もどうにか確保できたので来年には写真をのせることができるかも♪
Pandanus tectorius var.laevis(トゲナシアダン)
葉に刺がないためトゲナシアダンと呼ばれています。
アダンの葉にそっくりですが、まったくトゲがありませんでした。
Pandanus baptistii(トゲナシフイリタコノキ )
上野村のゴルフ場で見つけました。
他のパンダヌスに比べて明るい色調で柔らかいイメージです。
トゲがなく観葉植物としておすすめだと思います。
Pandanus veitchii hort. Veith ex M.T. Mast. et T. Moore(シマタコノキ,フイリタコノキ)
Pandanus Conoideus(ブアメラ)
インドネシアのパプア島だけ繁殖している植物。真っ赤な1メートルもの長さの実は、栄養価が高く原住民はサプリメントとして利用しているとか。
Pandanus tectorius var. ferreus(カネアダン)
アダンより小型でオノの刃もはじくほど幹が堅いためカネアダンと呼ばれる
Freycinetia formosana(ツルアダン)
ツルアダンは沖縄の西表島に自生しているツル性植物で、太い気根で樹木にからみついてよじ登ってゆく。オレンジ色の花はとても香りが強い
Freycinetia williamsii(ヒメツルアダン)
ヒメツルアダン
2006年6月10日